わきあがる もの

すっかり遅くなってしまったのだが、冬物と夏物の入れ替えをしようと箪笥からあれこれひっぱりだしては、整理整頓。合間に鏡の前で夏物ひとりファッションショーをはさみつつ、この服は上の引き出し、あの服は下とあれこれしてたら、夕方から夜になった。ひと段落して、最近、お気に入りのフジコヘミングのカンパネラを聴きながら座りこむと、積みあがった洋服の横に手のひらサイズの用紙が一枚。裏返すとタケモトピアノのお客様カード用紙。日付は平成18年7月5日、ピアノとお別れした日である。あの時、もうあんまり弾かへんし、場所もとるから、もういいかと思ってサヨナラして、でも、やっぱりまた逢いたい。ピアノの音色、いいねんな。シンセでは感じられない、鍵盤を弾く時の重みのある、ずしっとした感触が好きやねんな。私のピアノさんは、今、どこでどうしているんだろう。元気だろうか。山を越え、海を越え、どこかの国の女の子か男の子が、今、あのピアノを弾いているのかもしれない。そうであったらうれしいなとも思う。


ピアノと出会ったのは3歳か4歳。今でもはっきり思い出すのだが、近くのダイエーへ家族で買い物に出かけた時、おもちゃではなく、ひたすら、ピアノ!ピアノ!ピアノ!が欲しいーと連呼し、母親の足にしがみついて、全身で駄々をこねたのである。その勢いに根負けしたのか、父が音楽好きだったからか、とにかくその後に我が家にピアノが届いたのである。


あの時、なんであんなにピアノが欲しくなったのかは全く覚えておらず、ピアノ、ピアノと連呼していたことだけが鮮明なのだが、届いた日のことは全然覚えてない。記憶とはいかなるものかしら。


今日の音楽
FISHMANS 「ピアノ」