下駄

myu19802011-09-25

からんころん。

昔の人はこんな音をさせて、みんな街中を歩いていたんだろうな。

タイムトリップ出来るなら、その足音が響きあう街を散歩してみたい。

近代化が進み、道がきちんと補整されだした頃に、下駄の音が響いてうるさいとかなんとかで、消えていったとも言われているとNHKの番組で見たことがある。

秋の気配がどんどん近づき、少しひんやりとした肌寒さを感じる9月の終わりに、衣装に合う下駄を求めて奈良へやってきました。

奈良駅を出て、日曜日とあって観光客で賑わうひがしむき商店街を抜け、もちいどの商店街へ入り、ずんずん奥へ進んでゆくと、下駄や草履も扱っている上富(うえとみ)履物店に到着。

店内に入ると、店の奥から店主の奥さんが、いらっしゃい〜と出てこられました。とても優しい笑顔で迎えてくださって、もう安心感があふれ、ここに来てよかったーと思った瞬間でした。

衣装に合う下駄を探しているんですと写真を見せたら、奥さんは黒い漆塗りの赤い鼻緒の下駄を持って、これはどうかしらと。

早速、履いてみたら、私の足にもぴったり。
早くも自分の足に合う下駄を発見。

よっしゃーとなりましたが、こちらのお店は、下駄も好きな鼻緒も選べるというお話だったので、せっかくだから、いろんな鼻緒を見せて頂くことにしました。色とりどりの鼻緒から、自分にぴったり合いそうな鼻緒を探す。太さやバランスもきちんとあって、細いのはこの下駄には合わないからね、とか、あれは男性用の柄だからとか教えて頂きながら、あれこれ悩む。帯に水色の刺繍が入るという話を衣装チームのトモちゃんから聞いていたのもあり、品のある水色の花柄、赤が挿し色でポイントにある鼻緒が目にとまり、これにします!!と決定。

ここからが至福の時間でした。
奥さんが、もともとついていた鼻緒をほどき、新しい鼻緒を挿げ替えていくので、1時間ぐらいあったら出来るから、また戻っておいできてもいいよっと言われたのですが、ついつい見入ってしまった。手仕事の美しさ。見ていて飽きない。ここを通して、あそこがそうなって、下駄はこんな風にして作られるんだって知り、とてもシンプルな作りなのに、丈夫で、下駄を丁寧に履いていれば、鼻緒を変えることでまた新たに楽しめるし、無駄がないというか、昔のものというのは理にかなっているんだなって実感しました。奥さんとのお話にも夢中になり、結局どこにもいかず、のんびりとして、鼻緒を私の足にしっくりくるように何度も調整をして頂き、完成しました!!

鼻緒は普通はしっかりとした締め感にするんですが、私は舞台用で、普段はたくさん履かないから、ちょっとだけ緩めにして頂いたり、気遣いに溢れているのに、さりげない優しさがたくさんでした。

2時間くらいかな、鼻緒の作業が終わった後も、今の子供は大人と同じ渋い鼻緒を好むという下駄話やなんでもない世間話、奥さんが以前はご主人と二人三脚でこちらの履物屋さんをされていたこと、今はお一人で切り盛りされていること、街の移り変わりとか、ほんといろんなお話をしてくださって、その声や表情もとても柔らかで品があって、何があったわけでもなく落ち込んでしまっていた心もどこかへ飛んでゆき、すがすがしいくらいの晴ればれとした気持ちになってお店を出ました。

着物は、毎日着ないと着こなせない。洋服もそうよっと伺い、日常になってしまえば、なんでもないことなんだろうなって、着物に限らず、いろんなことに対して思う。そこに意識をむけるかどうか。150年くらい続く歴史にすごいですね〜と言うと、長ければいいってもんじゃないのよっとも。

深い。

ネットで、ひょいっと手軽に買える便利さもいいんだけど、自分で身につけるものはちゃんと確かめたかったのと、買ったことのない下駄を選ぶのに自分にあったものをちゃんとほしいと思っていたから、ほんとによかったです。

来年はこちらのお店に普段使いの下駄を買いに行こうっと。
また、奥さんと話せるのが楽しみです。

下駄はイベントの日に見てくださいね。とても可愛いよ。

みんな、今からはあんまり下駄と買わないかもしれないけれど、夏や下駄、草履を履きたくなったら、こちらのお店、お薦めです。

住所や場所の情報はネットにもありますが、詳しいHPがなくて、私のようにブログに上げている人からの情報で知りました。写真とかもたくさん載せてる方もいらっしゃいますので、気になった方は見てください〜。